知覚過敏に効く歯磨き粉の選び方!原因と正しいセルフケアを解説
監修:歯科医師 長谷川雄士
冷たいもので歯がしみる時、「多少のことなら」と様子を見る方もいらっしゃるでしょう。しかし、もしかしたらその症状は「知覚過敏」が原因かもしれません。知覚過敏は、放置すると悪化する場合があるため、早めの対処が必要です。
今回は、知覚過敏の原因や、効果的な成分、正しいケア方法を、わかりやすく解説していきます。毎日のケアにすぐ取り入れられるものもあるので、ぜひ参考にしてみてください。
知覚過敏とは?歯がしみるメカニズムを解説
知覚過敏(象牙質知覚過敏症)とは、虫歯ではないのに冷たいものや熱いもの、ブラッシングなどの刺激によって歯に痛みを感じる状態のことです。
なぜ歯がしみるのか?「象牙細管」の露出
通常、歯の頭の部分(歯冠部)は、非常に硬いエナメル質で覆われています。しかし、何らかの理由でエナメル質が削れたり、歯茎が下がったりすると、エナメル質の内側にある象牙質が露出します。
象牙質には「象牙細管」という細い管が無数にあり、これが更に内側にある神経(歯髄)へと繋がっています。外部からの刺激が象牙細管を通って神経に伝わることで、「キーン」とした痛みを感じるのが知覚過敏の正体です。
虫歯と知覚過敏の見分け方
知覚過敏の痛みは、多くの場合は一過性です。刺激を取り除けば痛みはすぐに治まります。
一方で、何もしていなくても痛む場合や、痛みが長く続く場合は、虫歯や歯髄炎の可能性が高いため、早急な歯科受診が必要です。
知覚過敏用歯磨き粉に含まれる「2つの有効成分」
知覚過敏対策としてすぐに取り入れられるのは、「知覚過敏用の歯磨き粉」の使用です。知覚過敏用の歯磨き粉には、主に2つのアプローチで作用する成分が含まれています。
神経の興奮を抑える「硝酸カリウム」
硝酸カリウム内のカリウムイオンが、歯の神経の周りにバリアを形成します。これにより、外部からの刺激が神経に伝わるのを防ぎ、神経の興奮(痛み信号の伝達)を抑制することができます。
多くの知覚過敏用歯磨き粉の主成分として採用されていて、即効性を感じやすいのが特徴です。
象牙細管を封鎖する「乳酸アルミニウム」
乳酸アルミニウムは、露出した象牙細管の穴を物理的に塞ぐ働きがあります。刺激の通り道をシャットアウトすることで、痛みを根本からブロックします。
また、最近では「ナノ粒子薬用ハイドロキシアパタイト」などの成分も、再石灰化を促しながら象牙細管を封鎖する効果が報告されています。
知覚過敏を悪化させない歯磨き粉の選び方
ポイントは、「低研磨」と「高濃度フッ素」です。
「研磨剤無配合」または「低研磨」を選ぶ
一般的な歯磨き粉に含まれる「研磨剤(清掃剤)」は、歯の着色汚れを落とすのに有効です。しかし、知覚過敏の人にとっては、露出した象牙質をさらに削ってしまうリスクがあります。
パッケージの成分表示を確認し、「低研磨」と記載があるものや、ジェルタイプの製品を選ぶのが賢明です。
フッ素濃度1,450ppmの製品を推奨
フッ素(フッ化ナトリウム等)には、歯の再石灰化を促進し、エナメル質を強化する働きがあります。日本では、2017年よりフッ素配合濃度の上限が1,000ppmから1,450ppmに引き上げられました。
知覚過敏を予防・緩和するために、この高濃度フッ素配合の製品を選ぶことが、日本歯科医師会等でも推奨されるセルフケアのポイントです。(ただし、高濃度フッ素は6歳未満のお子様への使用は控えましょう)
知覚過敏を引き起こす日常生活の意外な原因
なぜ、エナメル質が削れたり、歯茎が下がったりしてしまうのでしょうか。
歯周病
知覚過敏と歯周病には、非常に深い関係があります。
歯周病が進行すると、歯を支えている土台である「歯槽骨(しそうこつ)」という骨が少しずつ溶けてしまいます。土台が低くなれば、それに合わせるようにして歯茎も下がっていきます(歯肉退縮)。
歯茎が下がって露出した歯の根元部分は、エナメル質が存在しないため「象牙質」が剥き出しの状態です。
また、歯周病の治療で歯石を取り除いた直後に、これまで歯石で覆われていた象牙質が露出することで、一時的に知覚過敏の症状が強く出ることもあります。
強い力でのブラッシング(オーバーブラッシング)
知覚過敏の原因のひとつとして、「力を入れて磨きすぎること」が挙げられます。また、歯ブラシの硬さも関係しています。硬い歯ブラシでゴシゴシ磨くと、エナメル質が摩耗し、歯茎が退縮して根元が露出してしまいます。
良かれと思って一生懸命磨いても、磨き方と歯ブラシの選び方次第では、トラブルの原因になってしまうこともあるのです。
酸蝕症(さんしょくしょう)
酸性の強い飲み物や食べ物(コーラ、レモン、お酢など)を頻繁に摂取する習慣があると、酸によってエナメル質が溶け出します。これを酸蝕症と呼びます。
酸蝕症によってエナメル質が薄くなると、内側の象牙質に刺激が伝わりやすくなり、冷たいものがしみる原因となります。
特に、酸性のものを口に含んだままにする癖がある方や、ダラダラと時間をかけて飲む習慣がある方は注意が必要です。
歯ぎしり・食いしばり
睡眠中の歯ぎしりや、仕事中に無意識に行なっている食いしばりは、歯の根元に過度な負担をかけます。これにより、歯の根元のエナメル質がパキッと剥がれ落ちる「くさび状欠損」が起こり、知覚過敏を誘発します。
知覚過敏を改善するための正しいブラッシング術
知覚過敏対策には、歯磨き粉だけではなく磨き方も重要です。
毛質は「やわらかめ」、ペングリップで優しく磨く
歯ブラシは「グー」で握るのではなく、鉛筆を持つような「ペングリップ」が基本です。これにより、余計な力が入りにくく、力加減がしやすくなります。
毛先が広がらない程度の軽い力(150〜200g程度)で、1本ずつ磨くように小刻みに動かしましょう。
すすぎは少なめの水で1回だけ
せっかくの薬用成分(硝酸カリウムやフッ素)を洗い流さないために、歯磨き後のうがいは少量の水(15ml程度)で少なめにしましょう。
特に、高濃度フッ素の効果を持続させるためには、使用後30分間は飲食を控えるとより効果的です。
歯科医院で行う知覚過敏の専門的治療
ご自宅でのセルフケアだけで改善しない場合は、歯科医院での治療が必要です。
歯科医院では、症状や原因に合わせて以下のような治療を行います。
◎コーティング剤の塗布
象牙細管を封鎖する薬剤を直接塗布します。
◎レジン充填
削れてしまった部分にプラスチック(レジン)を詰め、物理的に保護します。
◎マウスピース作成
歯ぎしりが原因の場合、夜間用のガードを作成して負担を軽減します。
◎神経の処置
激痛が続いて生活に支障がある場合は、最終手段として神経を取る処置を行うこともあります。
◎歯周病治療
知覚過敏の原因が歯周病である場合は、歯根の露出を悪化させないための治療が必要です。
炎症を引き起こすもととなるプラーク(歯垢)や歯石を、専用の器具を用いて除去します。
歯石を取り除いた直後は、一時的に外部刺激が神経に伝わりやすくなり、しみる症状が強くなることもありますが、炎症が治まり歯茎が引き締まっていくことで、長期的に知覚過敏の悪化を防ぐことができます。
まずは日々のケアで知覚過敏対策を
知覚過敏は、多くの人が経験する現代病のひとつです。放置すると冷たいものや甘いものだけでなく、歯みがきや息を吸い込んだだけでも痛みを感じるようになることも少なくありません。
症状が進行すると、無意識のうちに痛みを避けて十分に歯磨きができなくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まる恐れもあります。そのため、早めに原因を見極め、適切なケアや治療を行うことが大切です。
ご自宅での知覚過敏ケアを行なってみても症状が改善しない場合は、別のトラブルが隠れている可能性があるため、早めに歯科医院を受診しましょう。
当院では、無料カウンセリングも受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
監修者プロフィール
- 資格・所属学会
- (社)日本口腔インプラント学会
- 愛知インプラントセンター
- 日本歯科医師会
- 静岡県歯科医師会
- 静岡市歯科医師会