顎関節症、何科が正解?歯科・口腔外科での診断と治療の流れ
監修:歯科医師 長谷川雄士
「あごが痛い」
「口が開きづらい」
「口を動かすとカクカク音がする」
そんな症状が出たとき、「何科に行けばいいの?」と迷われる方もいらっしゃるでしょう。
結論からお伝えすると、まずは歯科、特に口腔外科を標榜している歯科医院への受診がお勧めです。顎関節症の原因によっては、他の科の受診が必要なケースもあるため、まずは原因を正しく見極めることが重要です。
このコラムでは、顎関節症が気になった時に歯科・口腔外科を受診すべき理由と、治療の流れについてお話ししていきます。
顎関節症とは?セルフチェックと放置によるリスク
顎関節症は、顎の関節(顎関節)や、その周囲の筋肉、靭帯などに何らかの異常が生じ、次のような症状を引き起こす状態です。
<主な症状>
- を開けるときにカクカク音がする(クリック音)
- 顎やこめかみに痛みがある
- 口が開きにくい、途中で止まる
- 顎がだるい、違和感がある
- 咬み合わせに違和感がある
<セルフチェック>
- 指3本分、口が大きく開くか?
- 口を開けたときに痛みや音がするか?
- 食事中に顎が疲れる、だるくなるか?
- 朝起きた時に顎が疲れているか?
- 無意識に食いしばる癖があるか?
- 片側ばかりで咬む癖があるか?
これらの項目に当てはまる場合、顎関節症の可能性があります。
原因としては、
- 咬み合わせのズレ
- 歯ぎしり、食いしばり
- 姿勢の悪さ
- ストレス
- 外傷や感染症などによる炎症
などが挙げられます。
顎関節症は、これらのうちの複数の要因が関連して症状が出ていることが多く、原因は人によってさまざまです。ひとつの原因だけを取り除いても改善しないケースも少なくありません。そのため、顎関節や筋肉の状態だけでなく、咬み合わせや生活習慣、日常的な癖などを総合的に評価し、お一人おひとりの原因に合わせた治療や対策を行うことが必要です。
放置してしまうとどうなる?
顎関節症は一時的に症状が軽くなったり悪化したりを繰り返すことが多いため「そのうち治るかな」と放置してしまいがちです。
しかし、進行すると、口が開かなくなる(開口障害)、顎の変形、咬む機能の低下、慢性痛や頭痛、肩こり、耳鳴り、めまいなどの、全身症状へと発展することもあります。
そのため、早期発見・早期対応が重要です。
最初に歯科(口腔外科)を受診した方がいい理由
顎関節症は、顎の関節やその周囲の筋肉に問題が起きている状態で、歯科領域の症状として扱われます。
歯科の中でも口腔外科は、顎関節の構造や動き、咬み合わせ、筋肉、神経の知識を専門的に取り扱いますので、最も適切に診断・初期対応ができる診療科です。
整形外科などでも対応可能な場合もありますが、口の中の治療を行なえるのは歯科だけです。そのため、まずは歯科で診察を受け、必要に応じて他の科を受診する流れを取った方がスムーズです。他の科の受診に必要な紹介状なども歯科にて準備可能なため、ご安心ください。
顎関節症の治療の流れ
顎関節症は、原因に応じた治療方法があり、段階的にアプローチしていきます。
主に「痛みを取り除く」「関節や筋肉の機能を回復させる」「再発を防ぐ」という3つの目的に沿って行われます。
【軽度の場合】
まず、初期段階では、日常生活の中で顎に負担をかけている癖や習慣を見直すことから始めます。
症状がかなり軽度であれば、生活習慣の改善だけでも和らぐ可能性がありますが、多くの場合は夜間に装着するマウスピース(スプリント)が併用されます。
1、 生活習慣の改善・セルフケア
○頬杖、歯ぎしり、うつ伏せ寝の見直し
○食事で硬いものを避ける
○ストレス軽減
○顎を休ませる
2、マウスピース(スプリント)療法
○夜間の歯ぎしり・食いしばりによる顎関節への負担を軽減
○顎の位置を安定させる役割
【中等度の場合】
中等度の症状になってくると理学療法や筋機能療法が導入されることがあります。
また、歯の詰め物や被せ物の高さが合っていないことが原因となっている場合には、咬み合わせの微調整が必要なこともあります。
なかなか改善がみられない場合は、薬物療法も検討されます。
3、理学療法・筋機能療法
○顎や首回りのストレッチ、マッサージ
○筋肉をほぐし、バランスを調整
4、咬み合わせの調整(咬合調整)
○詰め物や被せ物の高さの調整、作り替え
○長期的に見た矯正治療の検討
5、薬物療法
○消炎鎮痛剤(痛みや炎症を抑える)
○筋弛緩薬(筋肉の緊張を和らげる)
○抗不安薬(ストレスによる緊張を緩める)
【重度の場合】
重度の顎関節症の場合には、手術が必要になることがあります。
6、外科的治療(口腔外科)
○関節鏡手術や関節円板の整復など
顎関節症は、原因も治療もひとつではありません。だからこそ、正確な診断に基づいたアプローチが必要です。
気になる症状があったら、まずは当院へご相談ください
顎関節症は、初期段階での症状が軽いことが多く放置されがちです。しかし、自然に改善することはあまり期待できず、一時は落ち着いても再発したり悪化したりすることが多いです。
そのため、初期段階での正しい対応が、その後の生活の質を大きく左右する病気と言えるでしょう。
「もしかしたら顎関節症かも?」と思ったら、まずは歯科(特に口腔外科のある歯科医院)への受診をお勧めします。少しでも痛みや違和感が続いているようであれば、放置せずにいつでもご相談ください。
監修者プロフィール
- 資格・所属学会
- (社)日本口腔インプラント学会
- 愛知インプラントセンター
- 日本歯科医師会
- 静岡県歯科医師会
- 静岡市歯科医師会