放置した虫歯が痛み出したら危険!リスクと早期治療の重要性を徹底解説
監修:歯科医師 長谷川雄士
「数年前から虫歯があるのはわかっていたけれど、つい歯医者に行かずに放置してしまった…」
「最近になって歯がズキズキ痛む。これってもう手遅れなのかな?」
そんな不安を抱えていませんか?
実際、虫歯を認識しつつも長年放置してしまう人は少なくありません。忙しさや恐怖心、恥ずかしさから歯科受診を避けてしまい、「気づけば何年も放置していた」というケースは非常に多いです。
しかし、虫歯は自然に治ることはなく、放置すれば必ず悪化していきます。本記事では、虫歯を放置することで起こるリスクと、進行の過程や治療法について詳しく解説します。
虫歯は放置しても治らない!進行の流れを知ろう
虫歯は、放置している間に確実に悪化していきます。虫歯の進行度は大きく5段階に分類されます。
<C0(初期段階)>
白いシミのような状態です。適切なケアで進行を止められる可能性があります。
<C1(エナメル質の虫歯)>
歯の表面に小さな穴が空いている状態です。痛みはほとんどありませんが、冷たいものがしみることがあります。大きさによっては、虫歯の部分を削って樹脂を詰める治療を行うことがあります。。
<C2(象牙質まで進行)>
穴が大きくなり、冷たい物や甘い物でしみたり、物を咬んだ時に痛みを感じたりします。虫歯を削って詰め物をする治療で修復可能です。
<C3(神経に到達)>
何もしていない状態でもズキズキとした強い痛みを感じます。歯の神経を取り除く治療(根幹治療)が必要です。神経を除去した後には、被せ物で修復することになります。
<C4(残根状態)>
歯の大部分が崩壊し、根だけ残っている状態です。神経が死んでしまうことで痛みはなくなり、多くの場合は抜歯が必要です。
上記のように、初期の虫歯にはほとんど自覚症状がありません。進行していくにつれて何かしらの症状が出始めます。つまり、「痛みが出てきた」というのは、虫歯がすでにC2〜C3まで進行しているというサインです。放置期間が長ければ長いほど虫歯は徐々に進行し、治療が複雑になり、歯を残せる可能性が低くなります。
虫歯を放置することで起こる全身リスク
虫歯は、お口の中の問題だけではありません。放置していると全身にまで悪影響を及ぼすおそれがあります。
〇強い口臭
神経が死んで腐敗した歯や膿が原因で、悪臭が発生します。また、歯に空いた穴に食べカスが溜まることも、細菌が繁殖して口臭を悪化させる原因となります。
〇副鼻腔炎や顎骨骨髄炎
歯の根の先端から細菌感染が鼻の奥にある副鼻腔へと広がり、副鼻腔炎や顎骨骨髄炎を引き起こすことがあります。顔の腫れや激しい痛み、発熱などの症状を伴うこともあり、場合によっては外科的な処置が必要になることもあります。
〇蜂窩織炎・敗血症
細菌が血液に入って周辺組織に感染すると、命に関わるケースもあります。
〇心筋梗塞や脳梗塞リスク
虫歯菌が動脈硬化を促進することがあります。これによって血管が詰まりやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まります。
特に、免疫力が低下している方や持病のある方にとっては、虫歯を放置することが命取りになることもあるため注意が必要です。
「手遅れ」とは限らない!放置している虫歯の治療法
「もう何年も放置したから治らないのでは?」と不安に感じるかもしれませんが、実際には治療法はいくつもあります。
1. 歯を残せる場合(根管治療+被せ物)
神経が感染や壊死していても、根管治療で歯の中をきれいに清掃・殺菌できれば、歯を残せることがあります。しかし、歯自体はもろくなっているため、咬む力に負けて割れないように土台で補強して被せ物をすることで、機能と見た目を回復します。
2. 歯を残せない場合(抜歯+補綴治療)
残念ながら、歯が大きく崩壊している場合は抜歯が必要です。その後は、歯が無くなった部分を補うために下記のような補綴治療を行い、しっかり咬める状態を取り戻します。
◎入れ歯
取り外し式の人工歯(義歯)です。取り外しができるので清掃性が高いですが、金属製のバネがついているものだと見栄えはよくありません。咬む力はやや落ちます。
◎ブリッジ
抜歯した歯の両隣の歯を利用して固定するタイプの人工歯です。自然な咬み心地を得られますが、健康な歯を削ってしまうことや、連結部分の清掃のしにくさなどがデメリットとして挙げられます。
◎インプラント
人工的な歯根を埋め込み、それを利用して土台をたて、被せ物を作る治療方法です。元の自分の歯に近い感覚で咬むことができます。審美性・機能性にもっとも優れています。
痛みに配慮した治療
虫歯を放置してしまう理由は様々ですが、「治療が痛そうだから」「麻酔が苦手」など、治療時の痛みや不安が原因となっていることが多いです。しかし、現代の歯科医療では、
- 表面麻酔で注射針が入る時のチクッとした痛みを軽減する
- 麻酔液を体温に近い温度に調整することで、麻酔中の痛みを軽減する
- 極細の注射針を使用する
- コンピューター制御で麻酔をゆっくり注入する
といった方法で、患者様にできる限り快適に治療を受けていただけるよう、痛みを最小限に抑える工夫が進んでいますのでご安心ください。
早期治療があなたの歯と健康を守ります
虫歯は、放置して悪化するほど治療が大がかりになり、時間も費用もかかります。そして何より、自分の歯を失うリスクが高まります。
「もっと早く歯医者に行けばよかった」と後悔する患者様を、私たちは数多く見てきました。
しかしその一方で、「勇気を出して早く来てよかった!」と笑顔になられる方もたくさんいらっしゃいます。
大切なのは、気づいたタイミングで歯科医院を受診することです。
数年間虫歯を放置していても、決して手遅れではありません。どんなに重度の虫歯でも、適切な治療法があります。
「痛いのは嫌」「歯がボロボロで恥ずかしい」患者様がそのような気持ちになることも、私たちは理解しています。あなたの不安に寄り添い、お一人おひとりのお口の中の状態に合った治療方法をご提案しますので、どうか安心して当院にご相談ください。
放置していた虫歯に気づいた「今」が、治療を始める一番のタイミングです。
監修者プロフィール
- 資格・所属学会
- (社)日本口腔インプラント学会
- 愛知インプラントセンター
- 日本歯科医師会
- 静岡県歯科医師会
- 静岡市歯科医師会
