根管治療の回数がかかるのはなぜ？期間や回数を減らす方法を解説

公開日：2025.05.30

根管治療は、進行した虫歯ができたときに行う歯を残すための非常に重要な治療です。しかし、何度も通院が必要になるため、「なぜこんなに回数がかかるの？」と疑問や不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、根管治療に複数回かかる理由や、一般的な治療期間、そして回数を減らすための方法について詳しく解説していきます。

根管治療ではどんなことをしているのか？

根管治療は、歯の内部にある根管（こんかん）と呼ばれる細い管の中を通る神経や血管（歯髄）が細菌に感染してしまった際に行われる処置です。虫歯が深く進行し神経に達したり、歯が折れたり、過去の治療が不十分で再感染したりした場合に必要になります。
感染した神経や細菌を除去し、根管内をきれいに清掃・消毒することで、歯を抜かずに保存することを目的としています。

初めて感染した神経を取り除く「抜髄（ばつずい）」と、すでに神経が死んでしまったり再感染したりして膿が溜まった根管をきれいにする「感染根管処置（かんせんこんかんしょち）」の2種類があります。

使用する器具と治療の流れについて

根管治療は、通常いくつかの段階を経て進められます。

１、虫歯の部分を削除
虫歯になっている部分を削り、根管内の処置をするための穴を開けます。神経が生きている場合は麻酔を行います。

２、神経を取り除き、根管を拡大する
「ファイル」や「リーマー」といった針のような細い専用器具を使って、感染した神経や血管、細菌などを慎重に取り除きます。

３、拡大した根管内を清掃・消毒
根管内の汚れや感染源を徹底的に除去し、薬剤で洗浄・消毒を行います。根管内が完全にきれいになるまで、この清掃と消毒の工程を何度か繰り返します。治療中は、根管内に細菌が再侵入するのを防ぐために仮の蓋をします。

４、根管を密閉する
根管内が清潔になったら、再感染を防ぐために防腐剤や「ガッターパーチャ」という樹脂の詰め物で、根管内を隙間なく密閉します。

５、歯を補強し、被せ物をする
根管治療で薄くなった歯を補強するため、土台を作り、その上に人工的な被せ物（クラウン）を装着して歯の機能と見た目を回復させます。

なぜ、根管治療は何回もかかるのか？

根管治療が1回の通院で終わることはほとんどなく、複数回にわたるのが一般的です。これにはいくつかの理由があります。

○根管の形状が複雑だから
歯の根の中にある根管は非常に細く、複雑に湾曲していたり、枝分かれしていたりする場合が多いです。
特に、奥歯のように根管が複数本あったり形状が複雑であったりする歯は処置が難しく、時間がかかります。このような複雑な構造を持つ根管の隅々まで、一度の治療で完全にきれいにすることは困難です。

○感染源を徹底的に除去する必要があるから
根管治療の成功には、根管内の細菌や感染組織を徹底的に除去することが不可欠です。狭く複雑な根管内の感染組織を完全に除去するには、根管内を何度も丁寧に清掃・消毒する必要があるため、複数回の治療が必要となります。

○薬剤の効果を待つ時間が必要だから
根管内を消毒するために薬剤を使用しますが、この薬剤が効果を十分に発揮するには時間がかかります。薬剤注入後に仮の蓋をして数日〜1週間程度待ち、再度治療を行って根管内の状態を確認するため、複数回の通院が必要になります。この待機期間は、治療の成功率を高め、再感染を防ぐための重要なプロセスです。

○痛みや炎症のコントロールが必要だから
治療中に痛みや炎症が発生することがあり、無理に治療を進めると症状が悪化する恐れがあります。そのため、これらの症状をコントロールしながら慎重に治療を進める必要があります。

○土台や被せ物の製作が必要だから
根管内部の治療が終わった後も、歯を補強するための土台の作製や、歯の形を回復させるための被せ物の型取りや装着が必要です。これらの工程にも別途通院が必要となります。

平均的な治療回数は？

根管内の清掃と消毒を終えるまでの治療回数は、一般的に3〜5回程度です。ただし、この回数は、初めての根管治療か再治療か、歯の感染や炎症の程度、治療する歯（前歯か奥歯か）によって大きく変わります。

特に、根管の感染が広範囲に広がっている場合や、以前の根管治療が不十分で再感染した場合（感染根管治療）、膿が溜まっている状態では、根管内を完全に清掃するために通常よりも多くの回数が必要になる傾向があります。また、前歯は根管が少ないため比較的早く進み、1〜2回の治療で完了することもありますが、奥歯は根管が複数あり複雑なため、より時間がかかります。

根管内の治療後に土台や被せ物の作製・装着を行なうため、完全に治療が完了するまでには、週に1回の通院で1ヶ月から2ヶ月、症例によってはそれ以上の時間がかかります。
再根管治療の場合は、合計で5〜7回程度の通院が必要になることもあります。

治療回数は減らせるのか？

根管治療は、その性質上、複数回の通院が必要になることが多いですが、回数を減らすための方法もいくつかあります。

○早期発見・早期治療を心がける
虫歯や歯の異常を早い段階で発見し、治療を開始することが最も重要です。炎症が広範囲に及ぶ前に治療できれば、複雑な根管治療を避けられたり、回数を少なく抑えられたりする可能性があります。痛みや違和感を覚えたら、放置せずに早めに歯科医院を受診しましょう。

○設備が整っている歯科医院を選ぶ
マイクロスコープ（歯科用顕微鏡）や歯科用CTスキャンなどの先進的な設備が導入されている歯科医院を選ぶことも、治療回数を減らす助けになります。マイクロスコープは、肉眼では見えにくい細部を拡大して見ることができるため（約20〜30倍）、精密な治療が可能になり、治療の精度が向上し、回数を減らしたり再発リスクを低減したりする効果が期待できます。

○自由診療を検討する
保険診療では、治療方法や使用できる器具、薬剤、そして治療時間に制限があります。そのため、根管内が完全にきれいになるまでに複数回かかるケースが多くなります。一方、自由診療ではこれらの制限がなく、患者さまの状態に合わせて柔軟な治療プランを立てることが可能です。マイクロスコープの使用や、1回の治療時間を長く確保して徹底的に治療を進めることで、全体の通院回数を減らせる可能性があります。ただし、自由診療は保険適用外のため、治療費は全額自己負担となり高額になる点に注意が必要です。

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精密治療と患者さまの負担

根管治療においては、根管内の細菌を徹底的に除去できるかどうかによって歯の寿命が左右されるため、精密で丁寧な治療が求められます。根管は非常に細く複雑なため、回数を短縮しすぎると、感染源の取り残しや再感染のリスクが高まる可能性があります。単に回数が少なければ良いというわけではなく、根管内を無菌に近いきれいな状態にすることが最も重要なのです。

また、自由診療などで1回の治療時間を長くすることは、治療回数を減らすことにつながる可能性がありますが、同時に患者さまが口を開けている時間も長くなるため、負担に感じる方もいらっしゃいます。治療方法を選択する際は、歯科医師とよく相談し、ご自身の状態や希望、体調などを考慮して、無理なく治療を続けられる方法を選ぶことが大切です。

不安なときはセカンドオピニオンを検討するという手も

根管治療は、その後の歯の寿命に大きく関わる治療です。もし、現在の治療に不安や疑問を感じている場合、別の歯科医師の意見を聞く「セカンドオピニオン」を検討するのも一つの手段です。特に、根管治療は初回治療の精度が非常に重要であり、再発すると治療がより困難になることもあるため、納得のいく治療を受けられるようにしましょう。

また、一般の歯科医院でも根管治療は行われますが、マイクロスコープのような専用機器がない場合もあります。より専門的な知識や技術を求める場合は、根管治療を専門に行っている医院もありますので、そういった医院に相談することも選択肢の一つです。

根幹治療について気になることがあったらご相談ください

根管治療をしっかりと完了させることで、歯の寿命を延ばし、再感染のリスクを減らすことができます。痛みが和らいだからといって途中で治療を中断してしまうと、細菌が完全に除去できておらず、症状が再発したり、歯が脆くなってひび割れたりするリスクが高まります。治療を開始した場合は、歯科医師の指示に従い、必ず最後まで通院するようにしましょう。

治療回数を減らしたい場合は、早期に治療を開始することや、マイクロスコープなどの設備が整った歯科医院、または自由診療での精密な治療を検討する方法があります。しかし、回数を減らすことだけを優先しすぎず、根管内を確実に清掃・消毒することが歯を守る上で最も大切であることを理解しておく必要があります。

根管治療についてご不安な点や疑問点はありませんか？治療が長引いている場合や、現在の治療に疑問を感じている場合は、ぜひ当院にご相談ください。

当院では、根管治療に関するご相談や、セカンドオピニオンも受け付けております。患者さま一人ひとりの歯の状態を丁寧に診査し、分かりやすい言葉でご説明いたします。
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