抜歯後の痛みはいつまで?痛みが続く時の対処法や注意点について
監修:歯科医師 長谷川雄士
むし歯や歯周病、親知らずの炎症などにより、やむを得ず抜歯をすることがあります。「歯を抜く=痛い」というイメージを持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか?抜歯の処置中は麻酔を使用するため、ほとんど痛みはありません。しかし、抜歯後には痛みが伴うケースもあり、処置後の注意点などを把握しておくことが大切です。
今回は、「抜歯後の痛みはいつまで続くのか」「痛みを和らげるにはどうすればよいのか」「注意すべき症状とは何か」をわかりやすく解説します。
抜歯後の時間経過による症状の変化
〇麻酔が切れた後の痛み
抜歯後の痛みは、麻酔が切れた直後がピークと言われており、1〜2日程度経過すると落ち着くことが多いです。
抜歯後1〜3日間は特に痛みが出やすいので、この期間は患部を冷やしたり、安静に過ごしたりするなどの心がけが必要です。
〇腫れのピークと回復期間
腫れは痛みよりやや遅れて現れ、抜歯後2〜3日目がピークです。その後、1週間程度の経過で治まっていくことが多いです。
ただし、親知らずの抜歯や難抜歯(歯根が湾曲している、骨を削るなど)の場合は、回復に10日前後かかることもあります。
〇上下の違いにも注意
上顎の抜歯の処置は比較的スムーズに行われ、腫れや痛みも軽度なことが多いのに対し、下顎の場合は抜歯後の痛みや腫れが強く出る傾向があります。これには、下顎の方が上顎よりも骨が硬いことが関係しています。
抜歯後の痛みを和らげる方法と注意点
1.安静に過ごす
処置当日は、激しい運動や長風呂、飲酒を避け、安静第一で過ごしてください。血行が促進されると出血や腫れが悪化する恐れがあります。
2.処方薬を正しく服用する
通常、麻酔は3〜4時間で切れるため、そのくらいの時間を目安にあらかじめ痛み止めを服用しておくと効果的です。抗生物質も感染予防に重要なため、用法・用量を守って服用しましょう。
3.患部の冷却(初日に限定)
患部を冷やすことで痛みや腫れが軽減されることがあります。しかし、冷やすのは24時間以内にしましょう。氷などで急激に冷やすと、血行が悪くなって傷の治りを遅らせてしまうこともあるため、濡れタオルなどで優しく冷やしてください。
4.ガーゼを正しく噛む
止血のためのガーゼは、歯科医師の指示通り30分程度噛むことが大切です。その後もなかなか出血が止まらない場合は、新しいガーゼに替えるようにしましょう。
5.強いうがいや患部への接触を避ける
傷口には「血餅(けっぺい)」と呼ばれるかさぶたのような血の塊ができます。これがはがれると治癒が遅れ、痛みの悪化に繋がります。強いうがいを避け、舌や指で触らないようにしてください。
6.喫煙・飲酒の制限
タバコは血行不良と免疫低下を招くので、処置後1週間は禁煙をすることが理想的です。また、飲酒は血行を促進し、出血量の増加や痛みの悪化、血液が固まりにくいなどの症状に繋がる可能性があるため控えましょう。
7.刺激の強い食事を避ける
処置後の食事は、おかゆ・スープ・ゼリーなど柔らかくて刺激の少ないものにしましょう。刺激の強いものや硬い食べ物は避け、抜歯部位とは反対側で咬むようにしてください。
8.頭を高くして寝る
枕を高めにすることで、頭部への血流を抑制して腫れや痛みの軽減が期待できます。
抜歯後のトラブルに要注意!ドライソケットとは?
通常は、処置後に安静にしていれば、痛みは日ごとに改善していきます。もし、3〜5日後に再び強い痛みが現れる場合は「ドライソケット」の可能性があります。
ドライソケットの症状と原因
ライソケットとは、患部に血餅が形成されなかったり、血餅が剥がれたりすることで骨が露出してしまう症状です。場合によっては強い痛みが2週間以上続くこともあります。
激しいうがいや、舌・指による患部の接触が主な原因になることが多いです。
ドライソケットの治療
- 傷口の洗浄・消毒を行う
- 抗生物質の処方
- 必要に応じて「掻爬(そうは)」処置を行い、新たな血餅を形成する
ドライソケットは、放置すると感染が骨に広がって炎症を起こし、急性歯槽骨炎を発症する場合があります。強い痛みがあり骨が壊死してしまうリスクもあるため早めの受診が重要です。
その他、痛みが長引く原因とは?
ドライソケット以外にも、以下のようなケースでは抜歯後の痛みが長引く可能性があります。
- 骨への負担が大きかった(特に下顎の親知らず)
- 抜歯時に歯茎の炎症が強かった(歯周病・膿瘍など)
- 抜歯に時間がかかった(歯根が湾曲しているなど複雑な形状だった)
術後のケアを十分に行なっても痛みが強かったり長引いたりするようであれば、すみやかに歯科医院で状態を確認してもらうようにしましょう。
抜歯に関するご相談は当院へ
抜歯後の痛みは身体の自然な反応であり、適切な対処と経過観察をすれば問題なく回復していきます。大切なのは、正しい知識を持ち、必要に応じて専門家へ相談することです。
当院では、CTなど最新設備による精密診断を行い、痛みに配慮した安全な抜歯処置と、術後のアフターケアを徹底しています。「抜歯が必要と言われたけれど不安」「抜歯後の痛みがなかなか引かない」といったお悩みにも対応しております。
セカンドオピニオンも受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
監修者プロフィール
- 資格・所属学会
- (社)日本口腔インプラント学会
- 愛知インプラントセンター
- 日本歯科医師会
- 静岡県歯科医師会
- 静岡市歯科医師会
