歯周病の初期症状を見逃さないためのセルフ診断
監修:歯科医師 長谷川雄士
歯周病は初期段階では自覚症状がほとんどなく、気づいたときには進行していることが多い病気です。さらに、歯周病は口腔内だけでなく、心血管疾患や糖尿病など全身の健康にも影響を及ぼす可能性があります。
歯周病の兆候を見逃さず、早めの対処ができるように、ご自宅で簡単にできるセルフチェックをご紹介します。定期的なチェックを習慣化し、健康な歯と歯茎を守りましょう。
歯周病とは?進行するとどうなる?
歯周病は、磨き残し(プラーク)を原因として細菌が繁殖し、歯茎などに炎症を引き起こす病気です。初期段階では自覚症状がほとんどなく、多くの場合、気づかずに放置されがちです。しかし、歯周病が進行すると、歯を支える顎の骨が溶け始め、歯がぐらついたり歯茎が下がってしまったりして、最悪の場合は歯を失ってしまうことがあるのです。そのため、歯周病の原因となるプラークを残さず、お口の中を清潔に保つことが重要です。早期に治療を行うことで、自分の歯を長く健康に保つことができます。
簡単!自宅でできる歯周病セルフチェックリスト
ご自宅で行えるセルフチェックをご紹介します。このチェックを定期的に行うことで、自分の口内状態を把握し、問題があれば早期に対処することが可能です。
セルフチェック項目
1. 歯茎や歯に関する症状
歯茎や歯の状態はどうですか?健康な歯茎は「ピンク色で引き締まっています」。
- 歯茎が赤く腫れている
- 歯茎がむずむずしたり、痛みを感じたりすることがある
- 歯磨きやフロスをすると出血する
- 歯茎が下がり、歯が長く見えるようになった
- 歯茎から膿が出ている
これらの症状が一つでも当てはまる場合は、歯周病の可能性があります。異常を感じた場合は歯科医院を受診するようにしてください。
2. 噛み合わせや口腔内の違和感
噛み合わせやお口の中の状態について見ていきましょう。
- 歯がぐらついている
- 硬いものなど噛むと違和感がある
- 歯が浮いているような違和感がある
- 歯と歯の間にものがよく詰まる
- 冷たいものや熱いものが沁みる
これらの症状が見られる場合は、歯周病による歯茎の退縮が起こり、顎の骨が溶けて歯の支えが失われている可能性があります。特に歯のぐらつきや食べ物が詰まるといった症状は、歯周病の進行を示す重要な兆候です。
3. 全身や生活習慣に関連するリスク
歯周病は、お口の中の問題だけではありません。全身の健康や生活習慣にも深く関連しています。
- 喫煙している
- 糖尿病のリスクがある
- ストレスがある
- 口臭が気になる
- 口の中がネバネバしている
- 歯科検診に1年以上行っていない
- 家族に歯周病の人がいる
判定の仕方
1〜3の項目のセルフチェックを行なってみて、いかがでしたでしょうか。
〇1つも該当しない
歯周病の疑いは低いです。
今まで通りしっかり歯磨きをするように心がけてください。
しかし、ご自身だけのケアでは行き届かない部分もあるため、定期的な歯科医院での検診をお勧めします。
〇1〜2つ該当している
歯周病の疑いがあります。
進行を防ぐためにも、毎日の歯磨きが正しくできているか、歯周病がどの程度進行しているのかを、かかりつけの歯科医院で診てもらうことが大切です。早めの受診が、健康な歯と歯茎を守ることにもつながります。
〇3つ以上該当している
歯周病が進行しています。
なるべく早く歯科医院を受診することをお勧めします。
歯周病予防の5つのポイント
歯周病の予防は日常の小さな習慣から始まります。ここで、歯周病を予防するための5つの重要なポイントをご紹介します。これらを毎日の生活に取り入れることで、歯周病の発症や進行を防ぐことが可能です。
1. 正しいブラッシング習慣を身につける
歯周病予防のためには、毎日のブラッシングでしっかりと歯垢(プラーク)を取り除くことが非常に重要です。
◇ブラッシングをするときは、45度の角度で
ブラッシングを行うときは、歯ブラシを歯と歯茎の境目に45度の角度で当てるようにします。
この角度で磨くことによって、プラークを効率よく除去することができます。
◇軽い力で小刻みに歯ブラシを動かす
力を入れすぎて磨くと、歯茎を傷つける可能性があります。そのため、磨く際は優しく、軽い力でブラッシングすることが大切です。また、歯ブラシを大きく動かすと、磨き残しが生じやすくなります。それを防ぐために、一本一本の歯を丁寧に、歯ブラシを小刻みに動かして磨くよう心がけましょう。
◇ブラッシングの時間を確保
ブラッシングの時間を確保することは、非常に重要です。毎日適切な時間をブラッシングに割り当てることで、虫歯や歯周病のリスクを減らすことができます。一般的には、朝食後と就寝前の1日2回、各2〜3分間が推奨されています。タイマーなどを使用するのも効果的です。
2. デンタルフロスや歯間ブラシを使う
歯ブラシだけでは、歯と歯の間などのプラークを完全に除去することはできません。そのため、デンタルフロスや歯間ブラシを使用することをおすすめいたします。これらのツールを毎日のブラッシングの際に取り入れていくとより効果的です。
< デンタルフロスの使用方法>
・適量のフロス(約30cm)を取り、指に巻きつけてコントロールしやすくします。
・フロスを歯と歯の間にゆっくりと挿入し、歯茎のラインに沿って優しく上下させてプラークを取り除きましょう。
<歯間ブラシの使用方法>
・歯間ブラシは、歯と歯の間にぴったりと合うサイズを選びましょう。
・ブラシを歯間に優しく挿入し、数回前後に動かして食べかすやプラークを除去しましょう。
3. 定期的に歯科検診と歯石除去を受ける
定期的な歯科検診と歯石除去は、歯周病予防に欠かせません。自宅でのケアだけでは除去しきれない歯石やプラークを取り除き、歯周病のリスクを減らすことができます。
検診の頻度は個々の口内状態によって異なりますが、一般的には3ヶ月から半年に一度のペースが推奨されています。特に歯周病のリスクが高い場合は、さらにこまめな検診が必要になることがあります。
4. 健康的な生活習慣を心がける
健康的な生活習慣を実践することで、歯周病のリスクを減らすことができます。具体的には禁煙、バランスの取れた食生活、適切な水分摂取、定期的な運動、ストレスの管理などが挙げられます。これらの習慣は、歯茎の健康を維持し、全身の健康に良い影響を与えます。
5.ストレスをため込まないようにする
ストレスをため込まないためには、日々のリラクゼーションと適切なストレスマネジメントが重要です。ストレスは、免疫力を低下させ、歯周病の進行を早める可能性があると言われています。深呼吸、瞑想、ヨガなど適度な運動で気分転換を図るようにしましょう。また、規則正しい生活を心がけ、十分な休息を取ることや、友人や家族とのコミュニケーションを大切にすることも効果的です。
歯周病が全身の健康に与える影響とは?
歯周病はお口の中だけの問題と思っているかもしれませんが、実は、全身の健康にも影響があると言われています。
例えば、
- 心血管疾患
- 糖尿病の悪化
- 呼吸器疾患
- 妊娠中の合併症
- 関節炎
などが挙げられます。
また、歯周病が原因で発生する炎症性物質は、血流によって全身に拡散し、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めることが知られています。さらに、歯周病は糖尿病の血糖コントロールを困難にし、肺炎などの呼吸器感染症を引き起こす可能性があります。これらのリスクを避けるためには、歯周病の予防とお口の中の管理が重要です。
歯科医院で定期検診を受けるメリット
歯科医院で定期検診を受けるメリットとは一体どのようなことがあるのでしょうか。
〇早期発見と治療
虫歯や歯周病などの口内疾患を早期に発見し、治療することができます。初期段階で対処することで、より大きな問題への進行を防ぐことが可能です。
〇専門的なクリーニング
プロフェッショナルなクリーニングにより、ブラッシングやフロスだけでは取り除けない歯石やプラークを除去できます。これにより、歯周病のリスクを減らし、口臭の改善にも効果的です。
〇病気の予防
定期的な検診は、歯や歯茎だけでなく、その他の健康面の問題の予防や発見をすることができます。
〇カスタマイズされた口内ケア指導
歯科医師や歯科衛生士はその方の口内状態に合わせたケア方法をご提案いたします。ご自身にあったケアは一般的なものよりも高い効果が得られ、生活スタイルを考慮しているため習慣化しやすいことにも期待が持てます。
〇全身の健康維持
口内の健康は全身の健康と密接に関連しています。定期的な歯科検診により、心血管疾患や糖尿病など、他の健康問題との関連症を管理することが可能です。
今日から始める歯周病対策
歯周病は自覚症状が少なく、気づいたときには進行していることがあります。さらに、口腔内だけでなく全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があるのです。
まずは早期発見・早期治療が重要です。 定期的な歯科検診を受けることで、歯周病の進行を防ぎ、健康な歯と歯茎を維持することができます。
歯周病の早期発見のため、ぜひ当医院にご相談ください。
監修者プロフィール
- 資格・所属学会
- (社)日本口腔インプラント学会
- 愛知インプラントセンター
- 日本歯科医師会
- 静岡県歯科医師会
- 静岡市歯科医師会
