抜歯をしたら必ず腫れるの?歯を抜く前に知っておきたい腫れ対策
監修:歯科医師 長谷川雄士
『歯を抜く』と聞くと、痛みや腫れを心配される方も多いのではないでしょうか?そのような不安から抜歯の決断をためらう方もいらっしゃるかもしれません。今回は、抜歯に対する不安を少しでも和らげるために、事前に知っておくべき対策をお伝えします。
抜歯をしても必ず腫れるわけではない
歯を抜くと、必ず腫れると思っていませんか?腫れは体が傷口を治そうとする炎症反応の一つですが、必ずしも腫れるというわけではありません。体の免疫力の状態や体調などの個人差もありますが、抜歯後は20〜30%の割合で腫れるとされています。また、抜歯方法や抜歯後の傷口の大きさなどによっても、腫れの大きさは左右されます。
抜歯後に腫れる確率が高いケース
抜歯をして腫れてしまうのにはいくつか理由があります。
- 抜歯に時間がかかる
- 歯茎を切開する
- 顎の骨を削る
など、体への負担が大きくなるほど、炎症も強くなり腫れる確率が高くなります。
抜く歯が埋まっている
抜歯する歯の生え方が、抜歯後の腫れに大きく影響することがあります。特に以下のような状態で生えている歯は注意が必要です。
- 横向きに生えている
- 歯茎や骨の中に埋まっている
- 歯根が曲がっている
これらの状況では、歯茎を切開したり、骨を削ったりするなどの複雑な処置が必要になることが多いため、炎症も強くなりやすいです。その結果、通常の抜歯よりも腫れやすくなるとされています。
炎症が強い
『痛い』『腫れている』といった症状がある時に、抜歯を考える方もいらっしゃいます。しかし、痛みや腫れがあるときは、炎症が強い状態にあるため、そのタイミングでの抜歯はおすすめできません。その理由は、炎症があると麻酔が効きにくく、抜歯後の腫れや出血、痛みがさらに強まる可能性があるからです。
症状がある場合は、緊急性がない限り、まずは抗生物質を使用して炎症を抑えることが優先されます。炎症が落ち着いた後に抜歯を行うことで、術後の腫れやその他のリスクを大幅に軽減することが可能になります。親知らずに症状がある場合の処置については、歯科医師に相談してから進めましょう。
腫れてしまった時の注意点
歯を抜いた後、通常2〜3日間が腫れのピークで、その後は徐々に落ち着いてきます。大体1週間から10日で腫れはほとんど治まることが多いです。この期間、体をゆっくり休めることが大切です。炎症が強いい時に体を無理に動かしてしまうと、血流がよくなることで腫れが強くなってしまったり、一度止まった血が再度出血したりすることもあるため、安静に過ごすよう心がけましょう。
また、腫れている時は患部を冷やすと良いとされています。保冷剤や冷たいタオルを使ってみてください。ただし、保冷剤を直接肌に当てたり、口の中に氷を入れると、逆に腫れを悪化させることがあるので注意が必要です。保冷剤はタオルで包んでから使用するなど、肌に直接触れないようにして冷やしましょう。
腫れが長引く場合
腫れは抜歯後の2〜3日でピークに達しますが、症状がそれ以上長く続く場合、傷口に感染が起こっているか、ドライソケットになっている可能性が考えられます。ドライソケットとは、抜歯した部位の血餅(けっぺい:傷口が治る過程でできるかさぶたのようなもの)が取れて骨が露出し、痛みや腫れを引き起こしている状態のことを言います。このような症状が出た場合は、早急に歯科医院を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
腫れ以外の症状
抜歯後に注意していただきたいことをご説明します。
〇激しくうがいをしない
抜歯後は、傷口を保護する血の塊(血餅)が形成されます。これは傷口を覆う蓋のような役割をもち、自然治癒を促します。しかし、激しくうがいをすると、この血餅が流れ落ちてしまうことがあり、その結果、骨が露出し痛みや腫れが生じる可能性が高まります。口の中に不快感を感じる場合は、口の中に水を含み1~2回軽くゆすぐ程度にしましょう。
〇患部を舌や指などで触れない
傷口が治っているか気になり、つい触ってしまうこともあると思いますが、患部を直接触るのは避けましょう。舌や指で傷口を触ると、雑菌が入り込んで感染を引き起こす原因となることもあり、また、血餅が剥がれることで腫れや痛みが悪化するリスクも高くなります。
〇血行が良くなることを避ける
抜歯後は血行を促進する激しい運動、長風呂、飲酒を控えてください。血行が良くなると出血が止まりにくくなることがあります。そのため、一度止まった血液が再度出血したり、血餅が作られず腫れが強くなったりする可能性もあります。
喫煙も控えましょう。タバコを吸うと血流が悪くなり、傷口の治癒が遅れ、腫れが強くなることがあるからです。
〇歯磨きは優しく行う
抜歯後もお口の中を清潔に保つことは非常に重要です。そのため、抜歯後でも歯磨きを行う必要があります。特に注意が必要なのは、傷口に歯ブラシが触れないようにすることです。傷口の部分に歯ブラシが当たってしまうと、感染して炎症を引き起こしたり、血餅が剥がれたりする原因にもなります。そのため、患部を避けながら、傷口周囲は慎重に歯磨きを行うようにしましょう。
腫れても慌てず適切な対応を
抜歯後の腫れの程度は個人差があるため、痛みの感じ方も、患者さんによってそれぞれ違います。また、抜歯の方法によっても腫れの度合いは異なります。もし2〜3日経っても症状が改善しない場合や、腫れがさらに強くなる場合は、患部を冷やすなどの処置を行い、早めに歯科医院を受診するようにしましょう。
お口のことに関して気になる症状がございましたら、いつでも当院にお気軽にご相談ください。
監修者プロフィール
- 資格・所属学会
- (社)日本口腔インプラント学会
- 愛知インプラントセンター
- 日本歯科医師会
- 静岡県歯科医師会
- 静岡市歯科医師会